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株主総会継続会に関する留意点

法務コラム

株主総会継続会に関する留意点

山下哲平弁護士

1 株主総会の継続会の意義

 継続会とは、株主総会において、延期又は続行の決議に基づき後日行われる総会をいい(会社法第317条参照)、延期とは、総会の成立後、議事に入らず会日を後日に変更する場合をいい、続行とは議事に入ったものの何らかの理由で審議が終了せず、審議未了のまま、総会を後日に継続して行う場合をいいます1
 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、ロックダウンを実施する海外に子会社を有している会社においては、その決算業務に遅延が生じてしまい、定時株主総会の時点において決算に関する報告ができない状況なる場合が多くあり、実務上、その対応方法として、先行する株主総会(「当初総会」)に加え、継続会を開催し、その継続会において報告事項を報告する方法を採ることがあります23

2 実務上の留意点

 ⑴ 継続会の開催要件

   継続会の開催にあたっては、以下の手続が必要となります4

① 継続会開催にかかる株主総会普通決議
・継続会の実施決定については、株主総会の専決事項とされており、当初総会において出席している株主の過半数の賛成を得る必要があります。
・なお、株主総会が延期又は続行の決議をする場合には、継続会の期日及び場所も定める必要がありますが、その具体的な決定を議長に一任する決議(「一任決議」)を行うことは許されると解されています。

② 株主総会継続会にかかる通知(一任決議の場合)
・継続会は、当初総会と連続性・同一性が認められるものであるため、継続会開催の為に再度の招集通知を送付することは、不要となります(会社法第317条)。
・もっとも、継続会の期日及び場所について、一任決議をした場合、当初総会終了後、具体的な日時と場所を決定し、これを先行する株主総会(「当初総会」)に出席した株主に通知する必要があります。

 ⑵ 継続会の開催時期

① 従来の多数説
 従来の多数説によれば、継続会が当初総会と同一性・連続性が認められるといえるためには、時間的な近接関係が必要であるとして、継続会を開催する会社の招集期間(例えば、公開会社であれば2週間、非公開会社であれば1週間等。)以内の開催が必要との解釈がされていました5

② 新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた解釈
 近時においては、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会や各省庁から継続会開催に関する見解が示されており6、「当初の株主総会の後合理的な期間内」に開催すれば足り、「現下の状況にかんがみ、3ヶ月を超えないことが一定の目安になる」とされています。

 ⑶ 役員等の任期に関する留意点

役員等の任期満了時点となる定時株主総会で、役員等の改選にかかる決議を行う当初総会に加えて、継続会が開催される場合には、当該役員等の改選時期が、当初総会の開催日か(決議時点か)、継続会の開催日か(閉会時点か)が問題となりますが、法務省のQ&A7によれば、以下のとおりに整理されています8

① 原則
原則として、改選期にある役員等の任期は、当該継続会の終結時までとされています。

② 例外
当初の株主総会において役員等を改選する必要があるときは、当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとして、その後任を選任する方法によることも可能です。この場合、議事録においても、その旨を明記する必要があります(例:「なお、本議案については、改選期にある各取締役の任期が本日開催の株主総会の時点で満了し、その後任を選任したものである。」等。)。

 ⑷ 株主総会シナリオに関する留意点

   通常の総会と比べ、株主総会のシナリオ上、例えば、以下の点につき留意が必要です9

① 当初総会
・報告事項については、継続会での報告としたい旨を理由とともに述べる必要があります。
・継続会の開催にかかる決定は、株主総会で決議すべき事項であるため、その動議及び決議を行う必要があります。
・閉会宣言ではなく、中断/休会宣言とすることが考えられます。

② 継続会
・報告事項について、質疑の省略は不可となります。

 ⑸ 株主総会議事録に関する留意点

通常の総会と比べ、議事録の記載では、例えば、以下の点につき留意が必要となります10

① 当初総会
・上記株主総会シナリオに関する留意点に対応する内容の変更が必要となります。
・役員の改選については、仮に、当初総会の日に役員の改選があったものとしたい場合には、その旨を明記する必要があります。

② 継続会
・ 上記株主総会シナリオに関する留意点に対応する内容の変更が必要となります。

以上


1 岩原編『会社法コンメンタール 7 ─機関⑴』287 頁(商事法務、2013)
2 継続会に代わる実務上の対応として、定時株主総会の延期開催や定時株主総会及び臨時総会の開催(2回開催)の方法が挙げられる(森・濱田松本法律事務所編『新・会社法実務問題シリーズ/4 株主総会の準備事務と議事運営〈第5版〉』576頁から578頁(中央経済社、2021年))。
3 なお、コロナ禍以前においても、不適切取引等の発覚により決算業務に遅延が生じた場合等に継続会開催での対応がされている(参考として、ホシザキ㈱「第73期定時株主総会及び継続会の開催に関するお知らせ」https://www.hoshizaki.co.jp/topics/190308-1.pdf)。
4 岩原編『会社法コンメンタール 7 ─機関⑴』289 頁から291頁(商事法務、2013)
5 岩原編『会社法コンメンタール 7 ─機関⑴』288 頁から289頁(商事法務、2013)
6 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応について」(令和2年4月15日)、金融庁、法務省及び経済産業省「継続会(会社法317条)について」(令和2年4月28日)
7 法務省「商業・法人登記事務に関するQ&A」(令和2年5月28日)
8 登記原因につき、当初総会又は継続会のいずれの開催日の退任/選任とするかに関わるため、議事録等の記載にも留意が必要となる(後述)。
9 後藤晃輔「新型コロナウイルス禍の株主総会におけるシナリオと議事録作成上の留意点」資料版商事法務No.435(2020)6頁~、柴田堅太郎「新型コロナウイルス感染症の影響による2020年6月定時株主総会開催の延期および継続会への対応」資料版商事法務No.434(2020)16頁~参照。
10 同上。